AT1320Aの欠点としてプローブ下部が遮蔽容器から露出していて、この部分に遮蔽が施されておらず、バックグラウンドとして自然放射線を拾ってきやすいことが指摘されていました。
東林間測定室では、バックグラウンドを低減させることによって、より正確な測定、時間の短縮さらに下限値を低めることができるのではないかと考え、遮蔽を強化する方法を模索し、実行してきました。
AT1320Aの場合、どれだけ遮蔽が有効に働いているかは、バックグラウンドテストの際示されるcpsの値で確かめることができます。例えば東林間の場合、なにもしない初期値で13の後半でした。
この値は、設置する環境によっても変化しますし、機器の個体差によっても左右されます。同じ環境でも、個体によってバラツキがあります。
東林間での最初の遮蔽は、ペットボトルによる遮蔽です。
測定機がすっぽりと収まる棚を作ってもらいましたので、その下部の部分に1リットルのペットボトルを48本詰め込みました。
これによりバックグラウンド計数率は12.85となりました。
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測定機下部にペットボトルを詰め込む |
次に考えたのは、鉛ブロックによる遮蔽です。
10×5×20cmの鉛ブロック20本を大阪の会社から購入しました。試しに10cm厚の箱型に組んでPM1703MOを入れて見ると・・・見事な遮蔽効果です。
AT1320Aは3本足のため、ブロックを下から上までうまく積むことができません。試行錯誤です。
プローブ下部はまず銅板で作ったボックスで囲みます。
鉛板20×21cm2枚をそれぞれ10×21cmにカットし、強力な布テープで貼り合わせ、10×10cmの銅板を底面にセットして、銅のボックスを作ります。
その後、通気対策として、一面のみ底の部分をカットしました。
上げ底のため、コンクリート製のタイルを3枚重ねます。一番上のブロックには、10×5×10cmのブロックをはめ込むために、穴を開けてあります。
試行錯誤しながら、積み上げていきます。
どうしても3本の足にひっかかってしまいそのままではうまく積み上げられません。半分にカットしなくては成らないものと、17cmくらいにカットしなければならないものがあることがわかりました。
金ノコで、半分にカットするのに3時間。これは大変とツイッターで呟いていたところ、そのツイートを読んでいたバイク屋さんが電動カッターを持って来てくださり、あっという間にカット作業終了!!
組み上げてから説明のために一角を取り外してみました。
内側で光っているのが銅のボックスです。
鉛ブロックによる遮蔽で、cpsは12.45から7.98へと大幅に改善しました。
この遮蔽効果によって、測定時間の短縮と、より下の数値まで見られるようになっています。
ただ限界近くまで見ようとすると、時間をかけなくてはならないのは同じ事で、汚染が微量であればあるほど今まで以上に時間をかけてしまうということになっています。
最終的な遮蔽の理想形態としては、遮蔽体の上部をさらにブロックで囲んでしまえば良いので、試しに並べてみますと、cpsで5台に突入します。
重量があるので、木製の棚で常時この形で運用するのは無理があります。
3本足を取り去り、鉄の台に遮蔽容器を載せ、上から下まで鉛ブロックで囲んでしまえば良いのですが・・・
簡易な遮蔽強化の方法としてはこれ。
リソグラフという印刷機のインクボトル。
これに1mmの鉛板を巻く。
座間測定室では、こちらを中心部に使用しています。
他に各地のAT1320A使用の測定所では、様々な工夫をして下部遮蔽にチャレンジしています。
これを下水道管にセットしさらに直径ほ拡大するためのジョイントに接続すれば、簡易的な下部遮蔽が可能で
しばらく下部遮蔽のみで運用していたのですが、遮蔽の虫が疼いてしまって・・・・
2点ほど強化。
鉛板0.8mm厚を遮蔽容器の本体形状にカット。右下の小さな穴は、蓋の動作を重くするためにブレーキ代わりのフエルトを貼る部分です。
これが鉛板を貼った状態。
重量のある蓋があまりにもスムーズに動きますと、実はとても危険です。重いものは重く動いた方が安全なのです。ですからブレーキ代わりの仕組みは必要です。
いろいろ考えた結果、安上がりで簡単なのが、椅子の足に貼る床への傷つき防止のためのフエルト。3~4mm厚のものを貼るとよいブレーキになります。
上部遮蔽に鉛のブロックの使用は諦めましたが、TGメタルという1cm厚の鉛合金の板で囲んでみることにしました。
設置のために鉛ブロックと遮蔽体の間の7mmの隙間に、合板を適当にカットしてさしこみました。
そして遮蔽体にすっぽりかぶさる上部の板の丸穴をTGメタルがきっちり入るように拡大。
一枚一枚はめ込んでいき、ゴムベルトで固定。一枚はサイズが大きすぎたので、縦にカットしてあります。
適当と書きましたが、実はプロの大工に仕事は頼んでいます。
これで、東林間の遮蔽強化は打ち止めとします。
計数率は5.8。
密度1のものを18時間計測すると検出下限は写真のような数値となるはず。
その後、突然シンチレーターが故障してしまい、現在は代替のプローブを使用しています。
7月に湿度の高い日が続き、ひょっとしたら湿気による電気回路の不具合も考えられると思い、銅のボックスの下部に穴を開け、さらに鉛ブロックの一部に隙間を作り、PC用のファンとACアダプターを接続し、隙間から空気を吸い込むようにしました。
これで銅ボックス内部での結露は防げるはずです。